Japanese | -> Audio | -> 道程その2 | -2004.8.24 Upadated- |
VICTOR JL-B11H
レコードを聴く機会が多くなるにつれ、前述モジュラ・ステレオの音質では満足できなくなっていった。まずは入口からということでベルトドライブ式のVICTOR JL-B11Hを購入。これによりカートリッジがクリスタル型から付属のMM型に変わったため、EQ(イコライジング)アンプが必要になった。「初歩のラジオ」の製作記事の中から簡単そうなものを見つけて製作。このアンプは機能本位であまり外観にはこだわらず、小さなアルミケースに詰め込んだ。片チャンネルトランジスタ2石の非常に簡易な回路だったが音質は確実に向上した。やはり信号入口のグレードアップは大きな効果をもたらすようで、もやっとしていた音がかなりスッキリした。
このプレーヤの元箱 4ch全盛の時代
それでも未だモジュラ・ステレオのパワーアンプ部のハムが気になっていたので、ゆっくりと腰を据えて独立したパワーアンプを作ることにした。本当はその頃「初歩のラジオ」によく載っていた真空管のアンプが作りたかったが、トランスの単価が高くこずかいとの兼ね合いで断念。全段直結OCL純コンプリメンタリSEPP構成で最大出力15W×2のパワーアンプ(山下幹雄氏設計で初ラ1975年2月号掲載)を製作記事の中から選択した。ただし外観だけはオリジナリティを出したかったので、ラックマウントタイプのような無骨な形状をイメージし、折曲げ機を購入してアルミ板からケースを作った。
幸運にも何のトラブルもなく完成。音質もまあまあでハムがないことにいたく感激した。音がまろやかなこのアンプは故障するまでずっと使用することになる。ちなみにいつかはレタリングを入れてと考えていたが、結局操作表示のないフロントパネルのままになってしまったことが悔やまれる。
最初に作ったパワーアンプ
回路図 ドライバがA606-C959、出力段がA627-D188(初ラ1975年2月号より)
DIATONE P-610DBユニット
残るはスピーカシステム。ユニットは当時自作派に定評のあったDIATONE P-610Bに決めていた。1本約2000円の16cmフルレンジユニット(いわゆるロクハン)だ。エンクロージャは自作のつもりだったが、日野オーディオでメーカ推奨サイズ(バスレフ型)のしっかりしたものが1本8000円で売られているのを見て安直に購入してしまった。出力端子を取り付けた後ユニットとケーブルで接続、吸音材を全面に入れユニットを固定して音を出してみると........思っていた以上にいい音である。まとまりのあるウォームトーンは耳に優しく、それでいて16cm一本とは思えないディテールの表現力。難点は箱のサイズが大きいこと、スピーカ・エッジが単なるスポンジで経年変化に弱く切れてしまうことなど。私の場合エッジが切れた時点で後継のP-610DBを購入しユニットを交換した。このスピーカーシステムはいまだ現役で頑張っている。将来的には箱を現在の圧縮チップのものから、固くて響きの良い集成材に替えたいが高い。。。
なお元のP-610Bはその後コイズミ無線で入手した鹿皮エッジ材で補修したが、何度かの引っ越しを経て現在その所在がわからなくなっている。音を比べてみたいのだが。
メーカ推奨サイズのエンクロージャ
学生にとってラジオ放送程ありがたいメディアはなかった。特にFM放送は昨今のようにべらべらとしゃべることもなく、淡々と音楽を流していた。番組表の載っている週刊誌を購入し聴きたい曲をチェック、テープを用意し段取りを決めておき、カセットテープに録音(エアチェック)して楽しむ。そして気に入った曲のレコードを購入する。これが文化だった。
当時から通信機器ブランドとして非常に信頼の厚かったTRIOのKT-5300を私は購入した。動作の安定性、音質ともに申し分ない製品だ。この機器を通じてどれだけ多くの音楽ソースに巡り合えたのだろう。
TRIO KT-5300
一応システム全体の形は整ったが人間次々と欲が出てくる。さらなる音質と機能性の向上を目指しプリアンプの製作を検討。その頃DCアンプが各雑誌で盛んに取り上げられており、本来オーディオアンプとして必要のない直流の増幅がなぜ必要なのか、またなぜ不必要なのか等、かなり熱い議論が交わされていた。中でも「無線と実験」誌上の金田明彦氏の製作記事にたいそう魅力を感じたが、指定されている部品がかなり高価で製作が自分には難しく思えた。結局比較的製作が容易でまた非常に安定した動作の印象を受けた稲葉保氏設計のFET入力DCプリアンプを作ることにした(電波技術1975年1月号掲載)。
本アンプの製作ではプリント基板の作成と使用部品の選択が重要で、ここさえきっちりとこなせば問題なく完成するはずだった。しかし実際にはEQアンプ片チャンネルのみオフセット調整がうまくいかず(発振と思われる)、充分な測定器をもたない私は結局そのチャンネルの基板ごと作り直してなんとか完成させた。アマチュアの場合、製作が思い通りに行かない時も多々ある。でもそこは技術より熱意。完成した時の音を聞きたいという一心で困難を乗り越え、多少遠回りしてもない知恵を絞れるしかないのだ。
音出ししてみると素晴しいの一言。完全にシステム全体の質が向上した。今までの音にさらにキレと躍動感が加わった。ただしカートリッジがSHURE M75だと若干音が丸くなりすぎ、DENON DL-103+昇圧トランスで全体のバランスがちょうど良くなった。プリアンプがDC構成でパワーアンプがAC構成というアンバランスだが、この組み合わせはとても気に入りプリアンプが故障するまでの20数年使い続けた。本アンプは故障したままになっているが時期を見て修理したい。
先代DCプリアンプ デザインは当時の金田式だったりする
回路図 基板ユニットでの販売もされていたらしい(電波技術1975年1月号より)