Japanese -> Music -> JAZZ -2004.11.2 Updated-

< JAZZ >

その1:いいガイドブックはあるか?

その2:初めて買った2枚のLP

その3:コルトレーン色に染まる

その4:ジャズカン(Jazz Country)
との出会い

その5:私のお勧め盤(for Biginners)

BLP4063

いいガイドブックはあるか?

Jazz Books

 聞き始めの頃に出会った本についてまず書こう。

 性格的なものかも知れないが、何かにとっかかる時まず私は必ずと言っていい程本を読む。JAZZを聞こうと思い立った時も本屋で入門書を探すところから始まった。手に取ったのは「モダン・ジャズ決定盤」(岡崎正通・大和明著、音楽之友社)。語り口が軽妙でさくさく読める本である。かなりの勢いでかつ何度も何度も読み返したおかげで予備知識は豊富に仕入れることができた。その後出版された「続モダン・ジャズ決定盤」(同著、同社)は切り口がアルバム単位でアーティスト単位であった前著と趣は異なるが、やはり同様に興味深く読むことができた。現在は「最新モダン・ジャズ決定盤」(同著、同社)というタイトルで、データも刷新された上で新規に発行されているので興味のある方は是非御一読を!

 一方でその頃はまだ、JAZZを聞く->JAZZ喫茶でお茶する、という図式が残っていた。JAZZ喫茶一覧の様なものはないかと探して手に入れたのが、ジャズ批評別冊「ジャズ日本列島」(ジャズ批評社)という本。これは実に重宝した。この本のおかげでいろいろな店や人や音楽と出会うことができた。改めて今読んでみると既に幻になってしまった店の数も多く寂しい限りである。


初めて買った2枚のLP

RollinsMingus

 ある日意を決し、初めてのJAZZのレコードを買いに秋葉原へ向かった。その時入手したのは、Saxophone Colossus / Sonny Rollins (Prestige LP-7079) とPithecanthropus Erectus / Charles Mingus (Atlantic 1237) である。JAZZとはどんなもんかとイメージをふくらませながら家路を急ぐ。家に着き、まずはSaxophone Colossusを聴いてみる。

「聞いたことあるようなメロディーだな....
でも面白みが分からんぞ」

アドリブを理解できない私の感性に訴えかけるものはなかった。

 続けてPithecanthropus Erectusをターンテーブルに置く。

「えっ!なんじゃこれは?」

Rollins以上に独創性の強いMingusの良さがその時の自分に分かるはずもなかった。

「JAZZは自分には合ってないのだろうか....」
「これっきりにした方が無難か....」
「でももったいないよな、せっかく買ったんだし」
「もうちょっと聴いてみるか....」

 その後は意地なってSaxophone Colossusを何度も何度も聴いた。するとどうだろう、いつのまにか、Rollinsのアドリブのテンションが高まるにつれ力んでいき、Rollinsのフレーズがリラックスするとともに安定感を覚える自分の姿がそこにあるではないか!

「いける....」

 それから次々にいろいろなレコードを聴き漁るようになった。とはいえまだまだMingusにはついていけなかったが。


コルトレーン色に染まる

Coltrane&Fuller
 JAZZを聴き始めてから暫くしてEric Dolphyにたどり着いた。この頃には何となく自分に肌の合うプレーヤか苦手なプレーヤかが判別できるようになっており、Eric Dolphyは最初から違和感がなかった。ある日のことお茶の水のDISK UNIONでBlue Trane / John Coltrane (Blue Note BLP-1577) というレコードが目に入った。前記「モダン・ジャズ決定盤」でJohn Coltraneという人の項にDolphyの事が書かれていたのを覚えていたので、

「ひょっとしたら、この John Coltrane という人も肌が合うかもしれない」

と思い購入。ジャケットが魅力的だったのも購買欲をそそった理由の一つだった。後から考えると、これがJohn Coltraneとの、またBLUE NOTEとの初めての出会いであった。

 Blue TraneはColtraneの作品の中ではかなりオーソドックスな方であったのが幸いし、1曲めの出だしから気に入ってしまった。今思えばBLUE NOTE諸作の録音技師Rudy Van Gelderの魔術にはまってしまったのかも知れない。その後とにかくこのレコードは良く聴いた。現在はThe Ultimate Blue Train (Blue Note 53428) として別Take2曲とパソコン用お楽しみソフトが付いて売られており、アドリブの違いを楽しむのも一興かと思う。特にLee Morganの好きな人は聞き逃してはならない。話を元に戻すと、気をよくした私は次にDolphyとの共演ものを探し求めた。Village Vanguardというところでのライブ録音がそれだとわかり、Live at the Village Vanguard (Impulse AS-10) とImpressions (同 AS-42) の2枚のアルバムを購入した。これらは今までに聴いたことがなかったような緊張感に満ちており、聞き手の私に正座を強いる程のものであった。グイグイ引き込まれていったが、肝心のColtraneとDolphyのカラミに関しては今一歩。 雑誌等の情報からプライベート盤に数多くの録音が残されていると判明し、OZONEだのBeppoだのSessionだの訳の分からないレーベルを日々追っかけていくようになった。これらは音質はひどいがその内容は凄く、存分に二人の共演を楽しむことができた。徐々にプライベート盤探しも一段落し、順序は逆だが、残りのImpulse盤やPrestige盤を次々に買い漁っていくようになった。気が付くと60枚を超えるColtraneのアルバムに囲まれていたわけである。

ColtraneLive at the Village Vanguard

 Coltraneの曲はほとんどすべて好きである。なのでお勧め曲を選択するのは非常に難しく、できれば数多く聴いてもらいたい。あえて選択するとすれば、動的なものとして、My Favorite Things (from "My Favorite Things" Atlantic SD-1361) やChasin' The Trane (from Impulse AS-10) 、静的なものとして、Violets For Your Furs (from "Coltrane" Prestige LP-7105) やAfter The Rain (from Impulse AS-42) を私はよく聞く。


ジャズカン(Jazz Country)との出会い

Jazz Country
 大学1・2年の頃私は、いわゆる名盤を求めて渋谷のジニアスや音楽館、水道橋のコンボや響、神保町スマイル、高田馬場イントロ、上野イトウなどを彷徨っていた。珈琲をすすっては(一般にまずい所が多かったが、イトウの珈琲はとても美味しかった)空間を流れる音楽に耳を委ね、内心知っている曲がかかると嬉しい気持ちになった覚えがある。一般にJAZZ屋はカウンタ席とボックス席があり、カウンタ席は常連客しか座れない特別なエリアでもちろん私はひっそりとボックス席に身を置いていた。

 ある日新しいJAZZ屋を発掘しようと、銀座のJazz Countryという店に足を運んだ。そこは泰明小学校の裏の雑居ビルの地下1階にあり、スペースが狭く薄暗いというのが第一印象。音量は大きく、かっかている曲の雰囲気は常日頃自分が聞いているものに近いが知らないレコードばかり。カウンタの向うにいるマスタはひげに色メガネでいかにも取っ付きにくそうな感じである。とにかくボックス席でじっと身構えて音楽に浸る。その曲の居心地の良さとCoffeeの美味しさに惹かれその後何度か訪れた。ある時意を決して、流れている曲のジャケットを確認しにカウンターへ。精一杯の笑みを浮かべて口を開く私。

「....あのーー、これいいですね....」

Horace Parlan、初めて見る名前だった。アルバムタイトルは、On The Spur Of The Moment (Blue Note LP-4074) 。その時何をしゃべったかはっきりとは覚えていないが、国内盤は発売されていないこと、他にもいい作品があることなどを教えてもらった。そしてその日を境に少しずつマスタと話すようになり気が付くとカウンタに座ることを許されていた。

 ここJazz Countryで私はいろいろなことを学んだように思う。いわゆる評論家の言う一流ミュージシャン以外にも素晴らしいプレイが山のようにあること。JAZZは頭でなく、体で聞くものだということ。オリジナルレコードの音の良さ。自分に正直に生きること。年齢を超えた人との出合いの素晴らしさ。そして−少し大袈裟に言えば−人生とはなんぞやを。

 まあ話を広げすぎるときりがないのでJAZZに限れば、今まで聞いたことのなかったミュージシャンの作品を次々に聞かせてもらった。

Tina Brooks, Frank Haynes, Stanley Turrentine, Booker Ervin, Eric Kloss, Ernie Henry, Sonny Criss, Lou Donaldson, Gigi Gryce, Blue Mitchell, Louis Smith, Bennie Green, Grachan Moncur III, Grant Green, Jimmy Raney, Freddie Redd, Andrew Hill, Jack Wilson, Dave Bailey, Grady Tate,..........

ちょっと書き切れない。とにかく選曲がいいので、かかる曲かかる曲みんな好きになってしまう。

 未だに年に数回行く度に感じることはやはり選曲の良さだ。かけている曲こそ違え、階段を降りて行く時に耳に飛び込んでくる音はいつも私の心を安心させる。膨大な数のJAZZを青春時代に聞きまくったマスタの経験があってこそ、こういう雰囲気作りができるのではないかと思う。加えてJAZZに対する人並みはずれた愛情があってこそ!!

 JAZZの好きな私の友だちの間では、親しみを込めてこう言う。

「ジャズカン、行こうか。」

私のお勧め盤(for Biginners)

 あくまで私自身の感ずる所であり、よくないといわれても責任は持てない。ただ経験上すんなりと溶け込めるようなアルバムをできるだけ選択した。

____どちらかというと静かなもの。

Kelly Blue / Wynton Kelly

Kelly Blue 音がコロコロ跳ねるピアニスト、Wynton Kellyの代表作。とにかくこのなんともいえない雰囲気をまず味わってほしい。Nat Adderley(cor), Bobby Jasper(fl), Benny Golson(ts)の3管フロントラインの織りなす厚みと、Wynton Kellyのあまりにもメロディアスで聴く度に惚れ惚れしてしまうアドリブが聴きどころである。その中でもピアノトリオ曲ではあるがA3のGreen Dolphin Street、ここでのWynton Kellyのアドリブは絶品だ。まずは、"Listen!"

Under Paris Skies / Freddie Redd

Under Paris Skies コンポーザ・ピアニスト、Freddie Reddのピアノトリオ盤。Freddie ReddはBLUE NOTEのThe Music From The Connectionで初めて接した時から惚れ込んでしまった。これ程人の曲よりもオリジナル曲で力を発揮するピアニストは珍しいのではないかと思う。通常聴き始めの頃はせめてテーマ部分だけでも自分の知っているスタンダード曲でないとしんどいと感じる場合が多いが、このLPに限ってはそんな危惧は無用。すぐにFreddie Reddの世界に入ってしまう。

____のりのりのもの。

Roll Call / Hank Mobley

Roll Call 聴くとすぐ元気が出る、そんなエネルギーの源のようなアルバム。メンバーは、Freddie Hubbard(tp), Hank Mobley(ts), Wynton Kelly(p), Paul Chambers(b), Art Blakey(ds)で、全員ベストな状態での吹き込みと思われる。特に聴いて欲しいのは、フロントのHubbardとMobleyの、全体的にうまくまとめようなんてこれっぽっちも考えていない、実にスリリングなアドリブ、そしてグループ全体を要所要所で鼓舞するBlakeyのドラムの凄まじさだ。これほどまでに聞き手を熱くするレコードはそうそうない!と言いたいところだが、うれしいことにこの世界には実は山のように存在する。

Up, Up And Away / Sonny Criss

Up, Up And Away とにかくSonny Crissのアルトがつっ走る。行き先はわからない。生でその行き先を確かめるべく来日コンサートを楽しみにしていたのだが、直前に銃で自殺してしまった。とても悲しかったのを覚えている。ただCrissのプレイはひたすら楽しい。聴き終わった時、こちらにどっと疲れが出る程、聴いている間はノリまくる。是非御賞味あれ!


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